釜石の思い出

あれは初めての光景だった。街には人はいなかった。製鉄にも、海べにも人はいなかった。町は壊れてた。一階は全て流され柱だけが残ってた。二階はかろうじて漆喰の壁が残されていたがそれらもぼろぼろだった。それは喩えれば強姦されてるように下半身は剥き出しにされ、上半身は千切れた布切れを惨めにまとう、そんな女の姿のように見えた。町が強姦されるってことあるんだなと情けない残酷さを感じるそんな光景だった。震災から三ヶ月の後の風景、妙にあのとき買った釜石ラスクの味が思い出される。それから復興はしたにせよ、あの時のショックは見た人でないと分からないと思うよ。井上ひさしが図書館の司書をやって、その夜警の夜を使って、図書館にある本を全部読破したという伝説はそのあと聞いた。