抽象的存在論

自分というのはどこまで行っても抽象的な存在なんで、何かこれをやった(例えば結婚した、どこそこの大学に入った、この仕事の結果を出した等)の具体的なものは決して本人を彩らない。また精神的に、何かを信じた、どこかに地獄や極楽があるとかの確信、人が裏切った、孤独になった、等も何も自分を引き締めるものでもない。更に肉体を鍛えた、走るスピードや泳ぐ能力が高まった等なども、個々の結果はその時点をピン止めするものの、実体が明るみに出たものでもない。唯一異性との交情は瞬間具体的な何かを引っ張り出してくるが、それは神の摂理で永遠に続くものではないようにできている。人間存在というのは確信を持ち得ないように持ち得ないようにできている。それが人間は抽象的な存在という意味だ。